神経多様性とデータ: Adam Mico 氏、Hunter Hansen 氏との対談

Mico 氏と Hansen 氏が自閉症の過程と魅力的なコミュニティがいかに彼らにとって充実したものであったかを共有します。

Adam Mico 氏、Hunter Hansen 氏の顔写真 The Fringe Festival での神経多様性に関するプレゼンテーションのすぐ後に Adam Mico 氏と Hunter Hansen 氏にお話を伺う機会がありました。The Fringe Festival はコミュニティによって企画されるイベントで、主流のイベントに参加する機会のない人々向けに用意されたプラットフォームです。Mico 氏と Hansen 氏を知っている人なら、彼らがデータコミュニティで非常に活動的であることをご存じでしょう。両者とも日常においてはデータビジュアライゼーションと分析のプロフェッショナルであり、人生においては神経多様性の提唱者でもあります。神経多様性とは、脳の違いは障害ではなく、普通であるとする見解のことです。神経多様性の発想によって、学習や思考での違いに対する偏見を軽減することができ、問題を障害ではなく、違いと表現できるようにします。また、神経学的に多様な個人が持つ特定の強みを明らかにするのに役立つ可能性がある指導法を解明することもできます。

Hansen 氏は「Neurodiversity and Data」(神経多様性とデータ) の中で、優れたデザインの質とは、直感的でアクセスしやすく、シンプルであることだと説明しています。神経学的に多様な人々は、パターン認識に強烈に集中し、それに秀でている可能性がありますが、ダッシュボードなどのレイアウトは雑然としているべきではなく、わかりやすく、簡潔で、一貫性があるべきだとしています。

Mico 氏は、自閉症の人々はコミュニティでうまくやっていくことも、成功することも、貢献することもできないという理屈が誤っていることを証明して自閉症の通説を覆す情報について説明しています。「The DataFam and Autism: A Match Made in Data」(DataFam と自閉症: データでのマッチメイキング) の中で、同氏は、DataFam がどのように Tableau ユーザーを支援することと、意図的に受容性を高めることに取り組んでいるかに触れています。そして、自閉症の人々に無料の Tableau Public プロフィールを作成してビジュアライゼーションの作成を始めるか、データビジュアライゼーションに関するブログを作成してアイデアを記し、共有し始めることを勧めています。これらの活動はいずれも新しい人が結束力の高いコミュニティと交流するのに役立つでしょう。    

このディスカッションでは、Mico 氏と Hansen 氏にデータビジュアライゼーションについてと、それが神経学的に多様なオーディエンスの興味を引く理由に加えて、ダッシュボードを見やすく、使いやすくするためのヒントについてお話ししていただきます。さらに、お二人の自閉症の過程と魅力的なコミュニティがいかに彼らにとって充実したものであったかについても共有していただきます。
     
Allen Hillery 氏 (AH): データビジュアライゼーションが神経学的に多様な人々の興味を引く理由についてお考えを聞かせていただけますか?

Adam Mico 氏 (AM): データビジュアライゼーションは、データを扱う自分独自の方法を見つけることができる一方で、表やパラグラフに欠けているオプションやコンテキストを与えてくれます。神経学的に多様な多くの人たちにとって、たくさんの言葉を理解し、意味を把握することは非常に困難です。個人的な経験から言えば、私は概要レベルで何らかの発見をして、必要に応じて深掘りできるほうがはるかに好きです。

Hunter Hansen 氏 (HH): データビジュアライゼーションは、ある一定の、または多くの神経学的に多様な人たち、特に計算力障害に該当する人たちが難しい分野に関心を持ち、意味を理解するのに役立つと感じています。計算力障害は、学習障害の1つで、数字に関連する概念や基礎的な数学のスキルを習得する能力を損なうものです。データや数字、数学に精通している人であっても、数字を「視覚化」する際には、機械的な領域を脱して、よりクリエイティブで見栄のよいものにするといった一種の刺激を感じます。

AH: お二人のプレゼンテーションを拝見して、神経学的に多様なユーザーの興味を引く特別なものが Tableau にはあると感じました。このことについて詳しく教えていただけますか?

AM: 私たちは、自分の好きなものを見つけるとそれに完全に没頭する傾向があります。 Tableau というツールでは、非常に多くのチャートタイプの作成とデータの探究に没頭できる方法がほぼ無限に存在しています。Tableau では、これらの機能を実践してデータロックスターになることができます。要するに、Tableau は私が得意とすることを与えてくれたのです。私が内面に抱えていたものを伝え、他の人々が情報に基づいて判断できるよう支援することが簡単になりました。 

HH: 私にとって Tableau は、多機能なだけでなく、目的でもあります。これは、単なるデータビジュアライゼーション機能のあるレポートツールではなく、データビジュアライゼーションのデザインツールです。Tableau はシンプルなものから複雑なものまで網羅しており、ある意味、「痒いところに手が届く」まで、より深く複雑な側面に強烈に集中できるような感じです。

AH: Tableau の製品デザインとユーザーエクスペリエンスは、神経学的に多様な人々のコミュニティの興味をさらに引きつけるのに役立っていると感じますか? 

AM: 私が利用し始めたとき、特にサーバー環境だったときの Tableau の製品デザインは今ほど楽しいものではありませんでした。今は多くの環境で使いやすくなったことがたくさんあります。私が好きなところは、ユーザーエクスペリエンスと優れたコミュニケーションツールである点です。また、かつて Excel の資料を怖がって開かなかった人たちがデータとその可能性に夢中になるのを見ることができるというメリットもあります。

HH: それらはいずれも優れた点ですが、私には思いつきませんでした。

AH: Mico さんはプレゼンテーションの中で自閉症と診断されて 10 年になると説明されていました。診断される前の人生はどのようなものだったのですか? 

AM: 自閉症と診断される前は、生活の大部分において私の考え方が周りの人と合っていないことをある程度認識していました。1980 年代にアメリカ中西部で暮らしていた幼少期にあった、私が記憶している自閉症に関する唯一の資料は、強度の常同的行動を取る重度の障害を持つ人の映像でした。それによって私は、自閉症であることに対して大変悪いイメージを持ち、長い間、そのことは考えませんでした。隠す方法を身に付けるまで、適合することについて思い悩み、適合できない理由を考えながら、ただ自分が好きなことをしていました。 

10 代の初めには隠すことに注力し、それを何年もかけて微調整しました。そして大学に通い、結婚して家族を持ちましたが、最終的には、自分で築き上げたうわべの姿を保つことができず、どのように対処すればよいのかわかりませんでした。自分が苦しんでいることにどのように対処すればよいのかわからず、妻と息子を失いたくなかったので、答えを見つけるためオンラインで調べ始めました。

オンラインのテストをやってみたところ、自閉症の可能性があるという結果で、子どものときに見た重度の障害を持つ子どもの映像がよみがえりました。その後数年はそれについて何も対処しませんでしたが、対処しないことで隠すことに気を配らなくなり、個人的にも仕事の面でも自身をさらに傷つけることになりました。オンラインでいくつかさらに詳細なテストを受けたところ、自閉症の可能性があることに気づかされましたが、関連するその他の病気を除外することはしませんでした。専門家の意見を求めに行ったところ、初期のアスペルガー予備軍であると診断され、 DSM V に取り組んでいる専門家を紹介してくれました。そこでは、アスペルガーという診断ではなく、その時点では関連する不安症状を伴う自閉症スペクトラム障害と診断されました。それを知ることは、その後受けたどのようなカウンセリングよりも、自閉症であることのメリットとデメリットにうまく対応するのに役立ちました。 

AH: 診断に至るこの過程から学んだものは何でしたか?

AM: 私にとって自閉症に関連する最悪の問題は不安症状でした。不安症状が始まると、隠すことができず、怒ってしまいます。自閉症であることを知り、それによる不安症状と自閉症を落ち着かせてくれる要因を理解することで、それらの症状が発生する頻度を減らし、再発した場合にもうまく対処できるようになります。自分が自閉症かもしれないと思うようであれば、年齢に関わらず診断を求めることをおすすめします。自閉症ではない診断が下ったとしても、それを知ることで、見えない「敵」に向かってもがかずに済みます。 

AH: 確か、Hansen さんは人生の早い段階で自閉症であることに気づかれたと思います。それは人生にどのような影響を与え、うまく対応していく上でどのように役立ちましたか?

HH: 残念ながら、私は社会や職場に「適合」してうまくやっていくため、自閉症の性質を隠し、分かりづらくすることにより多くの時間を費やしました。それは「普通の人間」に見えるよろいを身に付けていたようなものでしたし、ぎこちなかったです。そして、そうこうするうちにもっと「自分らしく」いられる場所のほうが、自身が幸せであることに気づきました。 

どちらかといえば、私のやり方は、もろい偽りの姿を装うスキルを身に付けてしまうことを警告するものです。それ以来、考え方が変わり、今は活気ある自閉症者として自分を確立することができる場所を利用することに目を向けています。

AH: お二人ともブログやビデオを通じてコミュニティの関心を引き付けているようですね。Hansen さんはご自身の YouTube チャンネル The Life Autistic で、自閉症者としての日常生活に関するたくさんのビデオを制作されています。これらから私は多くのことを学びました。Mico さんは毎週投稿を行っているご自身のブログ Medium で、データ分野の人々の関心を引き付け、Mico さんが興味を持っていることについて共有されています。

コミュニティの関心を引き付けることがいかに重要かを教えていただけますか? そして、そうすることでご自身とオーディエンスにどのような影響がありましたか? 

AM: 私の経験では、自身が完全にコミットできない限り、コミュニティの関心を引き付けたいとは思いません。多くの場合、それを行うには、コミュニティとその目的を確認するとともに、事前に調査する必要があります。自閉症者として、自身が部外者ではないと感じることは難しいのです。どのようなコミュニティでも多大な苦労なく自分が機能できることを学んだことは 45 年の人生で画期的なことです。コミュニティでの私の関与は、45 歳で補助輪を使うことなく、自転車の乗り方を学ぶのに少し似ています。個人的なレベルでは、それがすべてです。 
 
HH: 私からは、自分の人生経験を共有すると、それが専門知識として解釈されているように見えます。どういうわけか、この 2 つが予想していなかった方法で結びついています。「自分自身を表に出す」中、自閉症で神経学的に多様であることの弱みを見せることで、他の人々が自身が 1 人ではなく、機能不全でもないということを確認できることに気づきました。それはまた、私自身の経験がどのように他の人々の共感を呼び、彼らを支援することができるのかを示してくれました。これは自分にも返ってくるもので、私自身が人生における感謝の気持ちを感じるのに役立ちます。
 
AM: コミュニティを始める前は、どれだけ気分が落ち込んでいても、楽しみに思えることが 1 つありさえすれば良いということを、いつも念頭に置いていました。コミュニティでは、自身を元気づけてくれることがたくさんあるため、離れられません。オーディエンスに関しては、多数のフォロワーや私がすることを楽しみにしてくれる人を得ようとするつもりはまったくありませんでした。私はただ、他の人たちが輝き、スポットライトを浴びる機会を得るお手伝いをしたかっただけです。その強い輝きが私に返ってきたことには、本当に驚いています。 
 
HH: データコミュニティについて言えば、それは信頼性と誠実さの見事な集合体でもあります。私の仕事人生とデータ人生は自閉症としての人生です。そしてそれは、神経学的に典型的または非典型的であるかに関わらず、ありのままの自分を共有したいという多くの人々に響いているようです。これによって、私は自閉症である自分自身について共有することに、もう少し自信を持てるようになりました。他の人々も同じような影響を受けているようです。もし他の人に同じ影響がなかったとしても、コミュニティは専門的な架け橋となり、同様の神経多様性の特徴を持つ人々が他にもいることを知ることを可能にします。そこから、受容と正しい認識が生まれます。
 
AH: 自身の取り組みによって、神経学的に多様な人々のコミュニティに光が投じられていることについてどのように感じていますか?
 
AM: コミュニティにおいて神経学的に多様な存在である自分が自由でいられるのは、大いに Hansen さんのおかげだと言えます。Hansen さんのブログのファンになる前の私は、「知る必要がある」人々のみとの共有を行っていました。それは、私が理解していることをその人たちと確認する必要があったからです。Hansen さんのブログでは、Hansen さんは悪いイメージを取り繕うことなくコミュニティから受容されていました。また、最後に参加してみたいと思ったこの個人的なコミュニティで、私は正直かつ自分らしくいることができたらと願っていました。もっと自分らしくいられると分かり、隠すことをやめたことで、参加を続けていけると感じました。それ以降、自閉症を抱える多様な人々が集まり、成長を続けるコミュニティにおいて、数あるデータポイントの 1 つとして存在し得ることをうれしく思っています。また、いつかコミュニティが、他の人々が自分らしくいることができ、彼らを覆っていた可能性がある恥ずかしさや負い目などを感じることなく、表に出て来られるよう手助けできることを期待しています。

HH: 「私たちはあなたのすぐそばにいます」と私は冗談を言います。これまで受け取った中で最高のフィードバックは、悪いイメージが付きまといがちなグループのイメージを正常化することに私が貢献したというものです。実際、私たちは、人々に「奇妙」な仲間や「風変り」な同僚についてもっと共感する形で考え直してもらえるよう、私たち自身をより効果的に擁護することができたと感じています。私たちには違いはあっても、障害があるわけではありません。私は、その認識が後者から前者へとなりつつあると感じており、次第に理解され、受容され、行く行くは評価されるようになると思っています。