Hitachi Japan

Tableau のセルフ利用拡大で業務改善事例が続出


労務管理工数 1 万 8,000 時間削減、長時間労働者約 96 %減少を達成

導入の背景

「データの民主化」のさきがけとなった営業データ分析

日立製作所では近年、金融ビジネスユニット・社会ビジネスユニットなどの IT 領域を管轄するデジタルシステム&サービス統括本部が主体となって、誰もが各種データを自由に利活用できる環境の整備、いわゆる「データの民主化」を進めてきました。IT の専門家だけでなく、さまざまな部門の従業員が、主体的にデータを探索・加工・分析できるようにし、それを新たなビジネスの創出や業務の変革につなげる。そうした目的のもとに同本部は各部門に対し、セルフサービス型のツールやトレーニング環境の提供、コーチングなどの支援を行っています。

そうした取り組みが始まった背景について、同統括本部 IT イノベーション本部 グループ IT 企画部 部長の田川善之氏はこう説明します。「デジタルシステム&サービス統括本部にはエンジニアをはじめ、他の部門と比べると IT リテラシーの高い従業員が多いのですが、その関心は主に開発や提案といったお客様に対しての業務に向けられていました。そのため、労務管理やプロジェクト管理など、社内業務におけるデータ利活用に関してのリテラシーや関心は総じて低いという状況でした」

そうした課題がある中で同社は、あるプロジェクトを契機としてデータ分析ツールの導入を検討することになりました。同本部 デジタルイノベーション部の丹羽泰生氏はこう振り返ります。「建設機械を扱うグループ会社の営業データ分析を支援することになったのですが、私たちは門外漢なので業務内容をまったく知りません。そこで、まずは業務とデータを理解するための BI ツールが必要だということで、Tableau を試験的に使い始めたのです」

Tableau の導入・運用環境について

労務管理ダッシュボードで Tableau の利用が一気に拡大

丹羽氏らのチームは、顧客のターゲティング分析を行うために Tableau を導入。膨大な営業データを分析・活用して、購入確度の高い顧客を効率的に訪問できるリストを作成する仕組みを構築し、大きな成果を上げました。それが、同チームにおいて「データの民主化」が始まるひとつのきっかけとなったのです。

それに続いて、社内における Tableau の認知度を高めたのが、従業員の労働状況を可視化して管理するダッシュボードです。2019 年 4 月の働き方改革関連法の施行によって、時間外労働の上限規制が強化され、労働状況を管理する重要性がいっそう高まりました。丹羽氏らのチームは、Tableau の利用を社内に定着させる好機と判断。管理すべき労働状況の項目を誰でもひと目で把握できるダッシュボードを構築し、社内全体に展開しました。

加えて、Tableau なら専門知識やスキルのない人でも各種データを容易に可視化し、ビジネスに活用できるというメリットを体験してもらうため、ユーザー向けのハンズオンセミナーを定期的に開催しました。そうした施策の結果、Tableau の提供開始から1年後の2019 年 10 月、Tableau Explorer ユーザーは約 80 名、Tableau Viewer ユーザーは約 1 万1,000 名に到達。2022 年にはそれぞれ約 370 名と約 2 万 1,000 名にまで増加したのです。丹羽氏はいいます。

「Tableau は業務で使うツールではありますが、グラフィカルな無限の表現が可能なので、触っていて楽しいですし、データの適切な表現方法を理解できるようになるのが大きな魅力です。実際、Tableau の導入支援をしていく中でユーザーからもそういう言葉を聞きますし、そこが利用拡大に大いに寄与している部分だと感じています」

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Tableau 選定の理由について

決め手は可視化の容易さと分析の速さ、結果の伝わりやすさ

BI ツールの選定にあたり、デジタルシステム&サービス統括本部では市場に流通する主要な製品を漏れなく調査し、実際に触って比較検討したそうです。その中から Tableau を選定した理由について、丹羽氏はこう話します。

「データを容易に可視化できることや、さまざまな角度からスピーディに分析できること、その結果を誰にでもわかりやすい形に視覚化できることといった多くの点で、Tableau が優れていると感じました。そして実際、先に述べたグループ会社の営業データ分析で各種 BI ツールを使ってみたところ、Tableau のプロジェクトがもっとも大きな成果を出したため、導入を決めました」

「グループ会社のメンバーに対して、単にデータ分析の結果を提示するより、Tableau を使ってその場でデータを視覚化して見せるほうが、はるかに伝わりやすいと感じた」とTableau 選んだ理由について話します。

そうした経緯で同社は、Tableau のリセラーパートナーである日立ソリューションズの支援を受け、Tableau の本格導入に踏み切ったのです。

表現方法が無限にあり、かつビジュアル化の不得意な人でも簡単に操作でき、触れば触るほど楽しくなる。気になるデータを深堀りしていくと自動的に視覚化され、状況を把握できる点がすばらしいと感じています

Tableau の導入効果について

労務管理工数 1 万 8,000 時間削減、長時間労働者約 96 %減少を達成

Tableau を中核とするデータ利活用基盤(VAP:VisualAnalytics Platform)を構築・展開し、IT の専門家ではない個々の従業員が自らデータを分析して行動につなげられる環境を整えたことで、同社の内外ではデータを活用した業務改善の事例が次々に生まれるようになりました。

たとえば、プロジェクト情報やその品質状況を管理・共有するシステムや、エンジニアに各種の情報・知見を提供するシステムなどは、業務部門がセルフで Tableau を利用して構築したものです。同様にグループ会社においても、業績・プロジェクト・人財・労務等のデータを可視化・共有する基盤として、Tableau の自主的な利用が始まっています。まさに「データの民主化」の狙いであった、全従業員がデータを自由に利活用する状況が実現されつつあるのです。

Tableau 導入の効果は、数値としてもはっきりと現れています。2021 年度、労務管理のダッシュボードには年間約 11 万件のアクセスがあり、管理工数に換算して約 1 万 8,000 時間の削減につながっているのです。この成果について丹羽氏は次のように補足します。

「労務管理の工数削減は大事ですが、それ以上に重要なのは、長時間労働者を減らすこと。Tableau 導入前の 2018 年度と比較して、長時間労働者約 96 %減少を達成できたことがなによりの成果だと考えています。現在は、各従業員の労働状況や残業の集中状況などを瞬時に把握できるダッシュボードを展開し、いっそうの利用拡大を図っています」

スモールスタートでユーザーの声を取り入れながら改善していくアジャイル開発が可能になり、以前より現場との距離が近くなったと同時に、エンジニアの働き方自体が大きく変わりました

今後の展開について

営業・マーケティング領域への Tableau の貢献に大きな期待

Tableau を導入して誰もがデータを利活用できる環境を整備し、「データの民主化」を着実に前進させた同社。田川氏は、Tableau の活用をさらに加速させる今後の展開についてこう語ります。

「データ利活用を収益と企業成長につなげるのがデジタルシステム&サービス統括本部の役割なので、現状ホワイトスペースである営業領域やマーケティング領域に力を入れていきたい。そうした取り組みを進める上で、他のさまざまなツールと API で容易に連携できる Tableau は、非常に強力な武器になると期待しています。お客様にも利益をもたらすツールとして、デジタルシステム&サービス統括本部内や日立製作所内だけにとどまらず、グループ全体に Tableau の利用を拡大していきたいですね」